2024.04.18
2024年度の成蹊大学「メディア・リテラシー演習」のラジオ番組制作の授業が始まりました。今回も演習を担当いたします、文学部 現代社会学科教授 今田絵里香です。前回の授業は2022年度後期に実施しましたので、丸1年挟んだ後の実施ということになります。
メディア・リテラシー演習とは(成蹊大学文学部サイト)
過去のメディア・リテラシー演習の制作内容
成蹊大学「メディア・リテラシー演習」は2006年度前期に始まりました。そう考えると、今年度は第13回目。いつものように、制作したラジオ番組は2024年7月19日(金)14:00~15:00にむさしのFMでオンエアされる予定です。久しぶりの授業になります。はたして2024年度、履修生はどのようなことを学ぶのでしょうか。そしてどのようなラジオ番組を制作するのでしょうか。とても楽しみです。
さて、初回の授業で学んだことを見てみましょう。初回の授業には、6人の履修生が集まりました。
まず、ラジオというメディアとは何なのか、コミュニティ・メディアとしてのコミュニティFMとは何なのかということについて学びます。
それから、ここで13時30分になりましたので、むさしのFMの生放送番組を聞いて、むさしのFMのラジオ番組がどのようなものなのかを自分の耳をとおして理解することにします。
その後、自己紹介をおこないます。6人しかいないのですが、それぞれラジオにたいする思いが違っていることが浮かび上がってきます。
見てみましょう。
「小学校六年生のときに地元のコミュニティFMのラジオ番組に参加した」
「ここ数年、声優のラジオ番組が増加したため、それをよく聞いている」
「中学生のころからラジオ番組に興味を持っていて、高校三年生のときに成蹊大学ではラジオ番組を作ることができると聞いて入学を決めた」
「企画を作る団体に参加しているため、ラジオ番組を企画することをとおして企画を作るということを学びたいと思った」
「中学生のころにアイドルのラジオ番組を聞いたことがきっかけでラジオ番組を聞くようになったが、しだいにラジオ番組を作ることに興味が移行していった」
「高校生のころに放送部に所属していて、ラジオ番組を作っていた。そのため、ラジオ番組に出ることにも、作ることにも興味がある。また、他の地方で生まれ育ったため、武蔵野市のことを学びたいと思っている」など。
見事なまでに履修生たちは、ラジオ番組にたいしてそれぞれ異なるかかわりかたをしてきたことがわかります。
そしてここで、今年度のラジオ番組制作の統一テーマが発表されました。
今年度の統一テーマは、「東京・武蔵野・吉祥寺の100年」です!!
実は、2024年は、成蹊学園にとって記念すべき年なのです。
100年前の1924年、すなわち大正13年、成蹊学園は池袋から吉祥寺へ移転したのです。したがって、吉祥寺移転後100年という年だということになります。また、この年、成蹊学園を作った中村春二先生が逝去されたので、中村春二先生没後100年ということにもなります。
それから、成蹊学園のマスコットキャラクターであるピーチくんは、1924年3月3日生まれですので、ピーチくん100歳ということにもなります。
現在、成蹊大学のキャンパス内では、吉祥寺移転後100年を記念して、吉祥寺在住のイラストレーターのキン・シオタニさんによるウォールグラフィックの作品をあちらこちらに見ることができます。
もちろん1914年は、成蹊学園にとって記念の年であるということだけではないでしょう。
1913年、すなわち大正12年の9月1日には、関東大震災が発生しています。その後、東京の都市構造は大きく変わります。したがって1914年はその変化が始まる年だったということができます。
履修生にはこのテーマをとおして100年前の東京・武蔵野・吉祥寺に思いを馳せてほしいと思います。そして、どのような歴史をたどって現在のような都市になったのかをあらためて学んでほしいと思います。さらに、100年後、わたしたちの暮らす都市がどのようになるのかをイメージしてほしいと考えています。
その後、前回の2022年度の「メディア・リテラシー演習」で制作されたラジオ番組「知っていますか? 成蹊大学とジェンダー」を聞き、コメントをしたり、質問をしたりします。これも見てみましょう。
「取材先はどのようにして選んだのか?」
「わかりやすいし、聞き取りやすい。誰がどのようにラジオ番組の流れを決めたのか?」
「学生への取材→大学への取材→専門家のコメントという流れがよい。専門用語はどこまで入れていいのか?」
「男女の声が混じっていてメリハリがあってよい。印象に残るワードがあってよい。取材のときにどのようにして印象に残るワードを引き出すのか?」
「取材は何度もおこなってもいいのか?」
「テレビと違い、映像を使わないため、声だけに集中できる。取材のとき、雑音が入ってしまったときにどうしたらいいのか?」など。
これにたいして、むさしのFMの久保田さんが丁寧に回答してくれました。この久保田さんの回答のなかにいくつか興味深いものがありました。
「印象に残るワードがあるとよい」「すべてを説明しきらなくてよい」ということです。
ラジオ番組は音声のみでリスナーに何かを伝えなければなりません。しかもリスナーは車の運転をする、家事をするなど、他の作業をしながらラジオ番組を聞いていることが多いため、そのようなリスナーにも何かを訴えたり、満足してもらったりしなければなりません。そう考えると、作業の邪魔にならないようにしつつ、リスナーの心をつかんだり、記憶に残ったりするようなワードがあるとよいということになるのです。
とはいえ、ラジオ番組は履修生が取り組んでいる卒業論文のような「論文」とは違うものです。両者とも言葉のみで構成されていますが、ラジオ番組は限られた時間のなかに言葉を盛り込まなければならないのです。そのため、説明不足にならないようにしつつ、しかしすべてを説明するということはしなくてもよいということになるのです。
最後に、宿題として次回までにラジオ番組を聞いて感想を書いてくること、成蹊学園史料館を訪問するにあたって何か質問を考えてくることになりました。
第1回目の授業でも、むさしのFMの久保田さんから、またラジオ番組から、ラジオというメディアとは何かを考えるためのヒントをたくさんもらったように思います。今後も履修生たちはこの授業をとおして、ラジオというメディアとは何かを学びつづけることになるでしょう。
今後は履修生自身が本授業で経験したことを報告します。どうぞお楽しみに。
「ラジオ作る100年後のわたしたち燃えるツツジの見える教室」(演習担当 文学部 現代社会学科教授 今田絵里香)